建設業許可と経営事項審査について、簡単に説明します。
建設業許可とは
建設業許可とは、日本で建設工事を請け負う事業者が取得しなければならない許可のことです。一定規模以上の建設工事(請負金額が500万円以上、建築一式工事の場合は1,500万円以上または木造住宅で延べ面積150m²以上の工事)を請け負う場合、この許可が必須となります。
なぜ許可が必要なのか?
建設工事は、国民の生活や安全に直結する重要なインフラを担うため、無秩序な営業を防ぎ、適正な施工を確保するために、一定の要件を満たす業者にのみ許可を与える制度です。
許可の種類
- 国土交通大臣許可: 2つ以上の都道府県に営業所を設置する場合。
- 都道府県知事許可: 1つの都道府県のみに営業所を設置する場合。
許可の要件(主なもの)
建設業許可を取得するためには、いくつかの厳しい要件を満たす必要があります。
- 経営業務の管理責任者: 適切な経営経験を持つ者がいること(例:建設業の経営業務を5年以上経験した常勤の役員等)。
- 専任技術者: 営業所ごとに、その業種に関する専門知識や経験を持つ技術者が常勤でいること。
- 誠実性: 役員や個人事業主などが、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれがないこと。
- 財産的基礎または金銭的信用: 一定の自己資本額があるか、金融機関からの融資能力があるなど、工事を遂行できるだけの財産的基盤があること。
- 社会保険への加入: 健康保険、厚生年金保険、雇用保険に適切に加入していること。
- 欠格要件に該当しないこと: 過去に建設業法に違反したり、暴力団関係者ではないなど、許可を取り消されるような事由がないこと。
経営事項審査(経審)とは
経営事項審査(略して「経審(けいしん)」)とは、建設業許可を持っている業者が、国や地方公共団体などが発注する公共工事を直接請け負おうとする場合に、必ず受けなければならない審査です。
なぜ審査が必要なのか?
公共工事は、税金が使われるため、その工事を適切かつ確実に実施できる能力がある業者を選定する必要があります。経営事項審査は、建設業者の経営状況や技術力などを客観的な数値で評価し、公平かつ透明な業者選定の指標とすることを目的としています。
審査の評価項目
経審では、以下の項目が数値化され、総合的に評価されます。
- 経営状況(Y点): 財務状況(自己資本額、利益額など)を分析し、企業の健全性を評価します。これは「登録経営状況分析機関」が行います。
- 経営規模(X点): 完成工事高(過去の売上実績)や自己資本額・平均利益額など、企業の規模を評価します。
- 技術力(Z点): 技術職員の数や保有資格、元請完成工事高などが評価されます。
- その他の審査項目(W点): 社会性なども評価対象となります。具体的には、労働福祉の状況(社会保険加入状況など)、建設業の営業継続の状況、防災活動への貢献、法令遵守の状況、建設機械の保有状況、ISOなどの登録状況などが含まれます。
これらの各項目を数値化し、それらを合計したものが「総合評定値(P点)」として算出されます。このP点が高いほど、公共工事の入札において有利になります。
有効期間
経営事項審査の結果通知書の有効期間は、審査基準日(原則として直前の決算日)から1年7ヶ月です。公共工事の受注を継続的に行うためには、毎年決算後に速やかに審査を受ける必要があります。